昭和19年度に計画された強行輸送艦。

 高速と重武装を活かして敵地に侵入し、運貨船を発進させ、敵勢力下の味方に輸送を行なう、いわば「ネズミ輸送専用艦」。

 ソロモン方面がいよいよ危なくなった昭和18年ごろから計画が開始され、アメリカのAPD(高速輸送艦)と同じ発想で丁型駆逐艦の缶を半分にして、空いたスペースを船倉にする案もあったが、効率面から本型が建造された。
 計画当初は特務艦に分類され、特務艦特型(特々)と、なにやら凄い名前が付いていたが、、昭和19年2月から輸送艦の種別が制定され、艦艇となった。
 艦尾のスリップウェイは敵中で艦を停止する危険を侵すことなく、艦載艇を発進させる為の機構であるが、大戦末期には甲標的や回天を搭載した艦もあった。

 46隻が計画され、うち21隻が完成。フィリピンや沖縄、硫黄島などへの輸送作戦に投入され、16隻を失った。
 本型が投入された時には、もはや輸送作戦は苦境を通り越して絶望の域に達し、ほとんど自殺作戦と同意語になってしまっており、その性能を活かす機会は与えられなかった。
 艦尾にスリップウェイを装備した旧式駆逐艦改造の哨戒艇が開戦劈頭のウェーク島攻略に投入されており、そこから発展しなかった事が惜しまれる。


第1号型(新造時)

 名  称   第1号型
 ネームシップ  第1号輸送艦
 建造時期  昭和19年5月10日〜昭和20年7月15日
 建 造 数 21隻
 基準排水量  1550トン
 全  長   89m
 水 線 幅   10.2m
 吃  水   3.36m
 主  機   艦本式オールギヤードタービン1基
 推 進 軸 1軸
 主  缶   ホ号艦本式水管缶(重油専燃) 2基
 出  力   9500馬力
  計画速力  22ノット
 航 続 力 18ノットで3700浬
 燃料搭載量  重油415トン
 乗  員   148名
 兵  装   12.7センチ40口径連装高角砲 1基
 25ミリ三連装機銃 3基
 25ミリ連装機銃 1基
 25ミリ連装機銃 4基
 爆雷18個 
 搭 載 量  貨物260トン
 搭 載 艇  14m特型運貨船4隻(または甲標的2隻)*1

*1 カッター等、艦に属する「装載艇」は含まない。

同型艦:
 第1号〜第21号